●目次
序 章 問題の所在と研究の視座
１ 「チベット問題」と中国地域研究
２ 東チベットへの関心
３ ラルン五明仏学院を目指す漢人信徒
４ チベット仏教概説
５ 「チベット」「チベット人」「漢人」「華人」
６ 政府系文献資料の特徴と限界
７ 「テンジン・デレク事件」と漢語資料
８ 現地調査の障害と調査拠点の設定
９ 調査方法
10 本書の構成
11 本研究の意義
第一章 中国共産党の宗教政策──毛沢東から胡錦濤まで
１ はじめに
２ 違法宗教と邪教
３ マルクス主義宗教観と党員の宗教信仰問題
４ 中国共産党の宗教政策と二つの「中共中央文件」
５ 中国政府の宗教管理と公民の信教の自由
６ 毛沢東時期の宗教政策とチベット政策
７ ��小平時期の宗教政策とチベット政策
８ 江沢民時期の宗教政策とチベット政策
９ 胡錦濤時期の宗教政策とチベット政策
10 胡錦濤から習近平へ
第二章 「愛国活仏」ゲダ五世の虚実と軍の宗教政策
１ はじめに
２ ゲダ五世47年の生涯
３ 朱徳と紅軍への支援
４ チベット解放政策時期のゲダ五世
５ 「勧和団」の挫折と「チベット解放」の概念
６ フォードの回顧録
７ 封印された塑像
８ ゲダ六世と統一戦線活動
９ ゲダ五世と統一戦線活動
10 結 論
第三章 民主改革・文化大革命時期のデルゲ印経院
１ はじめに
２ デルゲ土司が開設した印経院
３ 甘孜州の民主改革と印経院の閉鎖
４ 文化大革命と印経院
５ 現地調査（2003年8月）
６ ヤンリン・ドジェ書記と周恩来総理
７ 程徳美「進蔵長征隊」の証言
８ 結 論
第四章 文化大革命後のデルゲ印経院と統一戦線活動
１ はじめに
２ 1980年・1981年甘孜州の宗教状況
３ 宗教復興政策と条例による管理
４ 文化大革命後のデルゲ印経院復興政策
５ 印経院の管理運営と世界文化遺産
６ ツェワン・ジメ院長訪問（2010年8月1日）
７ 結 論
第五章 ラルン五明仏学院粛正事件
１ はじめに
２ 甘孜州内の仏学院とラルン五明仏学院の名称
３ ラルン五明仏学院の組織・学制・構成
４ ジグメ・プンツォ評伝
５ 仏学院事件（2000年、2001年）
６ 県政府・公安局の通達
７ ダライ・ラマ十四世との交流
８ 事件の真相
９ ジグメ・プンツォの圓寂と遺言
10 副学院長テンジン・ジャンツォの苦悩
11 結論
第六章 ヤチェン修行地の支配構造と宗教NGO
１ はじめに
２ ヤチェン修行地の構成とインフラ整備
３ 楊洪と慈輝仏教基金会
４ アチュウ・ラマへの謁見と早朝講義
５ アチュウ・ラマのカリスマ的支配
６ 師資相承と化身ラマによる相続
７ アチュウ・ラマ圓寂後の支配構造
８ 2001年ヤチェン修行地事件
９ 党の宗教政策とヤチェン修行地の役割
10 結論
第七章 漢人・華人信徒の信仰とスピリチュアリティ
１ はじめに
２ ルポルタージュ『寧瑪的紅輝』
３ ラルン五明仏学院で出会った漢人信徒
４ ケンポ・ソダジを支えた呉玉天
５ ヤチェン修行地の漢人出家者と信徒
６ 漢人指導の高僧プーバ・タシ
７ イェシェ・ジャンツォ瞑想道場に集った漢人たち
８ 電脳空間の聖地と金銭トラブル
９ 華人信徒の霊性探究
10 漢人・華人信徒の宗教活動と中国共産党の宗教政策
11 北京漢人信徒の活動拠点とケンポ・ソダジ
12 結 論
第八章 ラルン五明仏学院の震災救援と宗教の公益活動
１ はじめに
２ 玉樹の民族と宗教事情
３ 青海地震と仏学院の救援活動
４ ソーシャル・キャピタルとしての仏学院
５ 胡主席・温総理の玉樹慰問と民族・宗教対策
６ 民衆の願いと招かれざる「愛国活仏」
７ 国家宗教事務局が主導した震災犠牲者追悼法要
８ 宗教の「社会貢献」と「宗教と和諧」政策
９ 結 論
第九章 「二〇〇八年チベット騒乱」の構造と東チベットの動向
１ はじめに
２ 「二〇〇八年ラサ騒乱」
３ 「ロンギュ・アダック事件」（2007年）と東チベット
４ 「二・二一同仁事件」
５ 「同仁事件」から「二〇〇八年東チベット騒乱」へ
６ 甘孜州における抗議行動と宗教政策
７ 宗教政策を支える公安・部隊・武警
８ 2009年以降の抗議活動
９ 結 論
「二〇〇八年チベット騒乱」資料
終 章 宗教政策、宗教ネットワーク、チベット問題
１ 東チベットに刺さったトゲ
２ 東チベットの宗教空間と宗教政策
３ 漢人・華人信徒の新潮流
４ 東チベットにおける宗教政策「四原則」
５ 東チベットと「チベット問題」
参考文献
あとがき
図版引用一覧
索 引
●著者紹介
川田 進（カワタ ススム）
1962年 岡山県生まれ
1988年 大阪外国語大学外国語学研究科修士課程修了
現 在 大阪工業大学工学部准教授
研究領域 中国地域研究，表象文化論
著書に『中国のプロパガンダ芸術─毛沢東様式に見る革命の記憶』（共著，岩波書店，2000年），『アジア国際関係論』（現代中国論研究会，2013年），『グローバル化と国際協力』（現代中国論研究会，2014年）など
