北大寮歌は恵迪寮寮生の操守と和合の象徴として、明治40年以来毎年寮生自身の手によって作詞
作曲されたものであって、自治寮の伝統、友情、理想、そして北海の自然を唱い上げた独特の味わい
を有する男性合唱歌である。同じことは、広義の寮歌に入る予科桜星会歌についても言うことができ
る。また、恵迪寮においては、新制大学になってからも連綿と寮歌が作り継がれていることは、旧制
高等学校なき今、全国にほとんどその類を見ない事象と言えるであろう。寮歌は単に寮生のものであ
るに止まらず、北大全体の学生歌として広く歌われて今日に至っている。かくして、寮歌は在学中の
学生にとっては若き力の表現であり、卒業後は折に触れて口ずさまれて青春を回顧するよすがとなり、
あるいは、同窓相い会して高唱される特質と長き生命を有し、年々巷間に去来する歌曲とは自ずから
その質を異にするものである。
　北大は全国的に知られている「都ぞ弥生」「瓔珞みがく」の2曲を代表歌として持つことを誇りと
する。だが反面、この2曲があまりにも著名であるために、他に数多くのすぐれた寮歌を有しながら
も、それを披露する機会が少ないのは残念であるし、同時に、北大生の間にも寮歌を知らずに卒業す
る者も少なくないようである。ここに一つ喜ばしいことには、応援団の諸君が中心となって、寮歌普
及のために尽力し、毎年盛大な北大寮歌祭を開催してこられた。感謝の意を表すると共に、敢て希望
をつけ加えるならば、寮歌合唱に当っては作詞・作曲者の名を唱えて先輩の努力を偲んでいただきた
いし、旧制時代の古い寮歌の歌い方については、旧制学生生活を送った先輩から積極的に伝承の歌い
方を習っていただきたい。
　従来行われてきた寮歌集には誤りが多いので、歌詞・曲譜の両面にわたって昨年来校訂の作業が行
われ、やがて北大図書刊行会から校訂を経た寮歌集が刊行される。このレコードは校訂版の寮歌集と
対をなすものであるから、できることなら、全曲を網羅したかった。しかし、それは事実上不可能と
言わねばならない。結局14曲の収録に止まったが、割愛に耐えぬ曲が次々と思い浮かぶ。収録曲の
選定に御不満の向きも多いことであろうが、選定に当った者も同様に遺憾の意を棄てきれないのであ
る。今回収録されなかった曲について、今後レコード化への意欲が高揚することを期待する。

＊このＣＤは1976年に発売されたレコードを基に製作したものであり、解説も同時のものをそのま
　ま収録した。

１．都ぞ弥生
　　　赤木顕次君 作曲／川越　守 編曲
　　　演奏：北大交響楽団

２．春雨に濡る
　　　高橋北雄君 作歌／西田貫道君 作曲
　　　合唱：北大恵迪寮

３．別離の歌
　　　大槻　均君 作歌／中村小弥太君 作曲／川越　守 編曲
　　　合唱：デューク・エイセス／伴奏：東芝レコーディング・オーケストラ

４．タンネの氷柱
　　　卜部　清君 作歌／白石祐義君 作曲
　　　合唱：北大恵迪寮

５．瓔珞みがく
　　　佐藤一雄君 作歌／置塩　奇君 作曲／川越　守 編曲
　　　合唱：北大合唱団／伴奏 北大交響楽団

６．郭公の声に
　　　古河勝夫君 作歌／宮本正治君 作曲
　　　合唱：北大恵迪寮ＯＢ

７．メドレー
　　津軽の滄海の
　　　高橋　寛君 作曲／川越　守 編曲
　　藻岩の緑
　　　柳沢秀雄君 作曲／川越　守 編曲
　　　演奏：北大交響楽団

８．都ぞ弥生
　　　横山芳介君 作歌／赤木顕次君 作曲
　　　合唱：北大恵迪寮

９．茫洋の海
　　三浦清一郎君 作歌／前野紀一君 作曲／川越　守 編曲
　　　合唱：デューク・エイセス／伴奏：東芝レコーディング・オーケストラ

10．蒼空高く翔らむと
　　　土井恒喜君 作歌／長谷川吉郎君 作曲
　　　合唱：北大恵迪寮

11．時潮の波
　　　渋谷富業君 作歌／寺井幸夫君 作曲
　　　合唱：北大恵迪寮ＯＢ

12．湖に星の散るなり
　　　切替辰哉君 作歌／岡田和雄君 作曲
　　　合唱：北大合唱団／伴奏 北大交響楽団

13．春未だ浅き
　　　平城鷹雄君 作歌／宍戸昌夫君 作曲／川越　守編曲
　　　合唱：北大合唱団

14．魔神の呪
　　　佐藤惣之助君 作歌／植村泰ニ君 作曲
　　　合唱：北大恵迪寮