●目次
序
第一章 日本の外で「固有の領土」論は説得力をもつのか──欧州戦後史のなかで考える(林 忠行)
なぜドイツの事例を考えるのか / 「固有の領土」をめぐるヨーロッパ人との対話 / 「固
有の領土」なきドイツ / 「住民移動」という新たな難題 / 戦後ドイツの課題 / アデナウ
アー外交──西ヨーロッパ共同体のなかでの発展 / アデナウアー期の国境問題 / ブラ
ント外交の始動 / 東方外交の現実主義 / 欧州安全保障協力会議とドイツ問題の克服 /
国内での闘争 / ブラントをどう評価するか / 「北方領土問題」へのメッセージ
第二章 国境と民族──コーカサスの歴史から考える(前田弘毅)
講義の狙い / コーカサスの地政学的位置 / 民族の坩堝 / 前近代のコーカサス国境 / 国
境を越える人々──エジプトのグルジア人 / ミスター五パーセント / コーカサス国境
の20世紀 / チェチェンの近代史 / 第二次世界大戦期の強制移住 / アブハジア / サム
ルザカノの謎 / 「平和の島」は可能か
第三章 旧ソ連中央アジアの国境──20世紀の歴史と現在(帯谷知可)
「国境」を切り口に中央アジアの現代史を振り返る / 国境線の変遷──三つの契機 / 中
央アジア民族別国境画定のダイナミズム / 「分割して統治せよ」は妥当か? / 民族の政
治化 / 中央アジア側のイニシアティヴ / 「民族」としての主張の時差 / 境界線を引く原
則の「揺れ」──遊牧民にも都市を! / タシュケントはウズベクのもの? カザフのも
の? / 現代の国境越えの旅から / ウズベキスタンの飛び地スフへ行く / ウズベキスタ
ン・カザフスタン・クルグズスタン周遊陸路の旅 / 国境とバザール(市場) / 立ちはだ
かる国境?──共存の道を求めて
第四章 カシミールと印パ・中印国境問題(吉田 修)
一つの広がりとしての南アジア / 英領インドの分離独立と国境 / イスラーム教徒の国、
パキスタンの生まれ方 / インド・パキスタン間に国境問題はあまりない / ヒマラヤで隔
てられたインドとカシミール / ヒンドゥー教の国ではないインド / パキスタンと中国 /
インドと中国 / 中華人民共和国の成立とチベット / 中印平和共存五原則とチベットの
地位 / 中印国境問題 / 譲り合いを求める中国と、譲らないインド / 現状追認で進展す
る中印関係
第五章 竹島問題と日本の課題(下條正男)
日本にとっての竹島問題 / 日韓における認識の溝 / 竹島問題とのかかわり / 外交カー
ドとしての李承晩ライン / 妄言と先送り / 強みは弱み? / 韓国による歴史的主張の誤
り / 安龍福の偽装 / 鬱陵島から竹島は見えるか / 国際法上の根拠はあるのか
第六章 中国と日本・ASEAN間の国境問題──波立つ東シナ海と平穏な南シナ海(石井 明)
内陸を向いた国──中国 / 琉球王国の問題 / 尖閣諸島の問題 / 尖閣諸島の帰属の棚上
げ論 / 中国領海法の制定 / 中国・ベトナム間の国境問題の由来 / 一九七九年の中越戦
争 / 中国・ベトナム間の陸上国境問題の解決 / 中国・ベトナム間の領海の画定 / 南シナ
海──南沙・西沙群島領有権問題 / 共同資源開発は可能か?
第七章 中ロ国境問題はいかに解決されたのか──「北方領土」への教訓(岩下明裕)
国境地域のアドバンテージ / 日ロ関係とのかかわり / 中ロ国境問題の前史と概観 / 交
渉決裂から軍事衝突へ / やれるところからやろう / 一九九一年協定への反発と「フィフ
ティ・フィフティ」の誕生 / 中ロと日ロの違い / 段階方式は適用可能か / 「フィフティ・
フィフティ」──一発決着の模索 / 国境画定後の共同利用 / 「四島返還」論の見直し /
領土問題が動くとき
執筆者紹介
●著者紹介
岩下 明裕(イワシタ アキヒロ)
所属:北海道大学スラブ研究センター
専門分野:ロシア外交 特にロシアとアジアの国際関係