●目次
はじめに
第1部 地球倫理への道 通底する価値を求めて
第1章 科学と文化の対話 ユネスコの使命
黙示録の世界 / 一つの言葉 / 人類史の二万分の一の時間帯に起こったこと / ユネス
コの出自 / 近代的「進歩」は正しかったのか? / コルドバ・セミナー / 科学は価値
を問わず / ヴェニス・シンポジウム / ヴェニス宣言 / バンクーバーで人類生存のアジ
ェンダを問う / アマゾン河口のベレン・シンポジウム / 東京シンポジウムへ / 東京か
らのメッセージ / 文化の多様性に関する世界宣言
第2章 通底する価値を探る
ことば / 普遍から通底へ / 排中律から包中律へ / 循環する時 / 直進する時 / 孤児
となった西欧文明 / バレンシア・シンポジウム / 地球倫理という発想 / 文明間の対話
国際年と9・11 / 文化の多様性に関する世界宣言 / 文化の多様性に関する国際条約 /
心の領域に市場原理を認めず / 文化の多様性と通底の価値シンポジウム
第3章 聖性と霊性の変遷 一神教と多神教
はじめに――エデンの園の二本の樹 / 理性と霊性の乖離 / 科学革命以来の存在論 /
ハンチントンの罠 / 不条理の宗教 / ロゴスとトーラー / 聖性の凋落 / 超越神 / 一
神教の誕生 / 唯一神教の出現 / 日本の場合 / イスラームの場合 / 結界の論理 / 禅
は無聖――壁の不在 / エデンの園にも壁があった / 中世フランス文学への影響 / 帰
属という問題 / 閉ざされた共同体 / 結界を破ったボロブドゥール / アニマ / 母殺し
の罪 / タナトスの噴出 / いのちの文明へ
第2部 人類文明の多様性 「あわいの智」へ
第4章 メシア思想と覇権主義
分断の時代にあって / メシア思想と救済の思想 / 神の死 / 若者たちの目の光 / パク
ス・アメリカーナの終焉 / 本来のメシア思想 / コミュニティの意味 / イスラームの特
殊性
第5章 キリスト教と仏教
はじめに / 大乗仏教とは? / キリスト教の変容 / 仏教の多様化 / 上座部仏教はいつ
生まれたのか? / 自浄運動としての上座部仏教 / キリスト教の自浄運動 / 神の訳語
の問題 / 清貧とローマへの服従 / 回勅『ラウダート・シ――』 / 橋を架ける / 仏教
との違いは? / キリスト教と仏教は通底するのか? / プロセス神学
第6章 イスラーム文明との対話
世界人口の四分の一 / 「異質な文明」との対話のために / シルクロードは「文明間の
対話の道――」 / 世界史から消えた「イスラーム文明――」 / 隊商都市に生まれた「生
活の掟――」 / アラブ化したイスラーム / 「よき国民をつくる教科書」から「普遍的
な文明史」へ / 知られざるイスラームの貢献 / 「西洋」と「西洋ならざるもの」の近
代 / イスラーム原理主義者の心中にある「恨――」 / 日本とイスラームを結ぶもの
第7章 ルネサンスとは何か?
はじめに / ルネサンスの意味 / ヨーロッパはいかにして生まれたか? / ロゴスとト
ーラー / フェニキアの道 / ヨーロッパ文明の基本形要約 / 問題設定――ヨーロッパ
の出自をギリシャに求める風潮 / 幻想の天国 / 異端審問 / 聖俗の拮抗 / 文芸復興 /
ルネサンスを惹起したもの / 第四次十字軍 / イスラーム世界の貢献 / ヴェネチアと
結んだビザンチン文明 / シナ文明はヨーロッパに届いていた / メディチ家の存在 /
イエズス会による東方からの情報 / 芸術作品から解くルネサンス / ギリシャを越えた
もの / 科学革命は何故ヨーロッパという一地域にのみ起こったのか? / To beから
To haveへの価値の転換 / 個人の確立とパースペクティヴ(遠近法)の誕生 / イコン
からパースペクティヴへ / 東洋美術のルネサンスへの影響 / 光背の出現 / 日本絵画
との比較
第8章 あわいの智へ オーギュスタン・ベルクの風土学が語るもの
はじめに / ある女子学生の想い出 / 聖書の正訳 / オーギュスタン・ベルクの風土学 /
間という存在 / ガブリエル・マルセルとの相似 / ノルマンディーの思い出 / AI一考 /
日本の姿 / あわいの智へIn-betweeness / アンダルシアのオリーヴ / 免疫学の教え /
誠は世界語 / 霊性と宗教 / 果てしない旅
第3部 アカデミア賞受賞記念講演
結 章 「普遍」から「通底」へ ――人類文明の危機と日本の役割
はじめに / 文明は「出会い」により生まれる / 全は個に、個は全に / 地球の砂漠化を
招くもの / 「互敬」を実現する「通底」の価値観 / 今こそ「生命の文明」を
おわりに
●著者紹介
服部 英二(ハットリ エイジ)
1934年生まれ。京都大学大学院にて文学修士。同博士課程単位取得後、仏政府給費留学生としてパリ大学(ソルボンヌ)博士課程に留学。1973〜94年ユネスコ本部勤務、首席広報官、文化担当特別事業部長等を歴任。その間に「科学と文化の対話」シンポジウムシリーズ、「シルクロード・対話の道総合調査」等を実施。94年退官後、ユネスコ事務局長顧問、同官房特別参与、麗澤大学・同大学院教授、国際比較文明学会副会長等を経て、現在、麗澤大学国際研究所客員教授、地球システム・倫理学会会長顧問、比較文明学会名誉理事、非営利一般財団法人京都フォーラム至誠塾長、NPO法人世界遺産アカデミー理事、世界ユネスコ協会・クラブ連盟名誉会長。1995年フランス政府より学術功労章オフィシェ位を授与、2010年全国日本学士会よりアカデミア賞を授賞される。
著書に『文明の交差路で考える』(講談社現代新書、1995年)、『出会いの風景――世界の中の日本文化』(1999年)、『文明間の対話』(2003年)、『文明は虹の大河』(2009年、共に麗澤大学出版会)、Letters from the Silk Roads(2000)、Deep Encounters(2009,共にUniversity Press of America)、『「対話」の文化』(鶴見和子との共著、2006年)、『未来世代の権利――地球倫理の先覚者、J-Y・クストー』(編著、2015年)、『転生する文明』(2019年、共に藤原書店)ほか。