●目次
まえがき(谷口 基)
第一部 歴史の視座
〈1868―1920年〉
ロマンの源流――明治期探偵小説の萌芽と挑戦(小松史生子)
1 はじめに
2 「ローマンスからノベルへ」か、「ローマンスとノベルと」か
3 上の文学、下の文学――探偵小説と女性
4 長編探偵小説への憧憬――ローマンスの行方
〈1920―45年〉
黄金時代のディレンマ――探偵小説か、文学か(谷口 基)
1 探偵小説は探偵小説以上のものとなりうるか
2 謎の復権は文学の領土から始まった
3「文学」は探偵小説を二分した
4 探偵小説は「文学」に接近し、「文学」を相対化した
〈1945―65年〉
〈戦後文学〉としてのミステリ(押野武志)
1 はじめに―― 〈戦後文学〉とは何か
2 戦後の本格ミステリ・ブームの背景
3 安吾と暗号
4 天城一の実践
5 ジャンルの再編――安吾から清張へ
6 純文学変質論争の周辺
7 おわりに――戦後文学からアンチ・ミステリへ
〈1965―85年〉
ミステリの〈拡散〉(横濱雄二)
1 はじめに
2 時代の拡散
3 ジャンルの拡散
4 メディアの拡散
5 おわりに
〈1985―2000年〉
「新本格」の登場とジャンルの変容(諸岡卓真)
1 はじめに
2 第一ステージ――「新本格」ムーブメント
3 講談社の動き
4 「本格ミステリー宣言」
5 東京創元社の動き
6 評論の活性化
7 「新本格」の定着
8 文庫化の動きと刊行点数の増加
9 小説以外のメディアの動き
10 京極夏彦の登場とメフィスト賞の設置
11 第二ステージの評論
12 ジャンルの拡大と本格ミステリ作家クラブの設立
〈2000年―〉
〈拡散〉と〈集中〉をこえて(井上貴翔)
1 はじめに
2 2000年代の〈拡散〉と〈集中〉という言説
3 2007年の作品群
4 推理と「空気」という問題系
5 推理それ自体の前景化
6 おわりに
第二部 探偵小説論の現在
本格+変格の「お化け屋敷」――山田風太郎『十三角関係』を読む(谷口 基)
1 屠られた「探偵小説」
2 「お化け屋敷」成立の背景
3 死者を言祝ぐことばたち
4 〈神殺し〉の理由
5 変格的終幕の意義
読者=犯人の系譜――中井英夫から深水黎一郎まで(押野武志)
1 はじめに――「意外な犯人」の創出
2 アンチ・ミステリの特質
3 入れ子としてのミステリ
4 アンチ・ミステリからメタフィクションへ
5 京極夏彦以降
6 読書行為=犯人の系譜
7 犯人=読者の限界?
8 おわりに――「意外な読者」の誕生
ミステリのメディアミックス――『八つ墓村』をめぐって(横濱雄二)
1 『八つ墓村』のメディアミックス展開
2 時間と空間
3 探偵と犯人
4 動機と結末
5 おわりに
「日常の謎」をこじらせる――相沢沙呼『午前零時のサンドリヨン』論(諸岡卓真)
1 はじめに
2 『午前零時のサンドリヨン』の概要
3 探偵の「余計なお世話」
4 「日常の謎」の「歪み」
5 学校と探偵
6 「日常の謎」をこじらせる
7 「空気」を読む探偵
8 言説としての推理
9 おわりに――死者の代弁者たち
検索型からポストヒューマンへ――メディア環境から見た10年代本格ミステリのゆくえ(渡邉大輔)
1 メディア技術の発達がもたらす本格ミステリのジャンル的変容
2 ゼロ年代における「検索型ミステリ」の台頭
3 「オブジェクト指向」の本格ミステリへ?
4 「推理」が消失する地平
第三部 座談会
座談会 ミステリと評論の間
参加者:浅木原忍、大森滋樹/葉音、谷口文威、柄刀一、松本寛大/司会:諸岡卓真
1 ミステリと評論の間
2 ミステリと北海道
3 昨今のミステリ出版事情
報告 昨今のミステリ出版事情(谷口文威)
あとがき(押野武志)
執筆者紹介
●著者紹介
浅木原 忍(アサギハラ シノブ)
1985年、青森県生まれ。同人小説サークル「Rhythm Five」代表。
2016年、同人誌として発行した『ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド【増補改訂版】』で第16回本格ミステリ大賞評論・研究部門を受賞。著書に『ミステリ読者のための連城三紀彦全作品ガイド』(2017年、論創社)など。
井上 貴翔(イノウエ キショウ)
1981年、大阪府生まれ。北海道医療大学教員。専攻は日本近現代文学、日本近現代文化。
共著に『日本探偵小説を読む――偏光と挑発のミステリ史』(2013年、北海道大学出版会)、論文に「技術〔テクノロジー〕が生み出すもの――佐藤春夫「指紋」論」(『日本文学』2013年6月)、「「指紋」の隔たり――古畑種基「指紋」(1926)と林熊生「指紋」(1943)」(『北海道医療大学看護福祉学部紀要』2015年12月)など。
大森 滋樹(オオモリ シゲキ)
1965年、北海道生まれ。北海道情報大学非常勤講師、作家。
大森葉音名義の小説に『果てしなく流れる砂の歌』(2013年、文藝春秋)、『プランタンの優雅な退屈』(2015年、原書房)。共著に『ニアミステリのすすめ』(2018年、原書房)、『本格ミステリ・ディケイド300』(2012年、原書房)など。
押野 武志(オシノ タケシ)
1965年、山形県生まれ。北海道大学教員。専攻は日本近代文学。
著書に『童貞としての宮沢賢治』(2003年、筑摩書房)、『文学の権能――漱石・賢治・安吾の系譜』(2009年、翰林書房)、編著に『日本サブカルチャーを読む――銀河鉄道の夜からAKB48まで』(2015年、北海道大学出版会)など。
小松 史生子(コマツ ショウコ)
1972年、東京都生まれ。金城学院大学教員。専攻は日本近代文学、大衆メディア文化。
著書に『乱歩と名古屋――地方都市モダニズムと探偵小説原風景』(2007年、風媒社)、『探偵小説のペルソナ――奇想と異常心理の言語態』(2015年、双文社出版)など。
谷口 文威(タニグチ フミタケ)
1971年、北海道生まれ。北海道情報大学教員。株式会社えにしテック アドバイザー。専攻は機械学習、パターン認識。
共著に『Ruby 逆引きレシピ――すぐに美味しいサンプル&テクニック232(PROGRAMMER'S RECIPE)』(2009年、翔泳社)など。
谷口 基(タニグチ モトイ)
1964年、東京都生まれ。茨城大学教員。専攻は日本近代文学。
著書に『戦前戦後異端文学論――奇想と反骨』(2009年、新典社)、『戦後変格派・山田風太郎――敗戦・科学・神・幽霊』(2013年、青弓社)、『変格探偵小説入門――奇想の遺産』(2013年、岩波書店)、共編著に『定本夢野久作全集』(2016年〜、国書刊行会)など。
柄刀 一(ツカトウ ハジメ)
1959年、北海道生まれ。本格ミステリ作家。
近著に『密室の神話』(2014年、文藝春秋)、『猫の時間』(2016年、光文社)、『月食館の朝と夜』(2017年、講談社)など。
松本 寛大(マツモト カンダイ)
1971年、北海道生まれ。ミステリ作家。
『玻璃の家』(2009年、講談社)で島田荘司選「第一回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」受賞。そのほかの著書に『妖精の墓標』(2013年、講談社)、共著に『北の想像力《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅』(2014年、寿郎社)など。
諸岡 卓真(モロオカ タクマ)
1977年、福島県生まれ。北海道情報大学教員。専攻は日本近現代文学(主にミステリ)。
著書に『現代本格ミステリの研究――「後期クイーン的問題」をめぐって』(2010年、北海道大学出版会)、共編著に『日本探偵小説を読む――偏光と挑発のミステリ史』(2013年、北海道大学出版会)など。
横濱 雄二(ヨコハマ ユウジ)
1972年、北海道生まれ。甲南女子大学教員。専攻は日本近現代文学、現代視聴覚文化。
共著に『日本サブカルチャーを読む――銀河鉄道の夜からAKB48まで』(2015年、北海道大学出版会)、『映画と文学――交響する想像力』(2016年、森話社)、『マンガ・アニメで論文・レポートを書く――「好き」を学問にする方法』(2017年、ミネルヴァ書房)など。
渡邉 大輔(ワタナベ ダイスケ)
1982年、栃木県生まれ。跡見学園女子大学教員。専攻は日本映画史・映像文化論・メディア論。
著書に『イメージの進行形』(2012年、人文書院)、共著に『1990年代論』(2017年、河出書房新社)、『リメイク映画の創造力』(2017年、水声社)など。
※なべは邉の異体字